前回の続きです。
マジックの世界には他の芸事と同様にショーレースがあります。不思議さやオリジナリティなどを競い合います。私はステージマジシャンになってすぐ、コンテストに出るようになりました。審査員の方にギリギリアウトだねと言われるくらい下手くそだったのですが、コンテストに出ると沢山仲間ができるので、それを目的に参加していました。
勝つことは視野に入れていなかったのですが、見た人の印象に残したいという気持ちは人一倍ありましたので、とにかく他のマジシャンとは違う方向性でコンテストに出ていました。特に重視していたのは、同じ演技を二度としないということです。これはコンテストマジシャンからすれば、いつまでたっても洗練されないので全然いい事ではないのですが、私は本当に飽き性だったので、一度行ったマジックを他のコンテストで改めて行うことは一度もありませんでした。当時は業界のマジシャンに新しい現象を見せたいという一心で手順や現象を作っていたので、同じことをもう一度やるわけにはいかなかったのです。
そんな私ですが、なんとICMという大会で初めて賞を頂きました。それはアジア大会にゲストコンテスタントとして参加できる賞で、いつもなら1位の人が手に入れていました。が、私は順位圏外でした。審査員の方に後で聞いてみると、技術やパフォーマンスは完全にアウトだったけど、アイディアがずば抜けていた。アジア大会までに技術の部分を磨けばいいところまで行けると判断して貴方に賞を出した。と言っていただきました。が、、同じマジックを二度やらないポリシーの私は、やはりアジア大会でも手順をガラッと変えて出場するのでした。(少し怒られました)
私は日本のほとんどのコンテストに参加しました。それまでは四国の仲間が多かったのですが、県外の実力派若手マジシャンの仲間がどんどん増えていきました。その頃に私はコンテストに出場しなくなり、ショーを作りたいと思い始めます。こんだけ素敵な仲間と出会ったのだから、この素晴らしい演技を四国のみんなに見てもらいたい、そして以前の僕のようにモチベーションを上げて欲しい!と考え、ショーを企画するようになります。
私はコンテストマジシャンから、マジックショーの主催者へと変わっていきます。